東京高等裁判所 昭和33年(う)1299号 判決
被告人 永柳コルク工業株式会社 外一名
〔抄 録〕
法人税法が採用している申告納税制度は、会計年度における業務の迅速化と納税者間の納期限の公平を期するため、祖税債務の確定を専ら税務署に一任するというような消極的な賦課課税制度と異り、納税者が自発的に納税額を計算して納税するという自主的な民主的制度であり、各事業年度の所得に対する法人税の納付義務は、法人による自発的な政府(税務署長)に対する申告書の提出と同時に、これに記載された法人税額通り具体的に確定し、従つてまた、法人税法は、その当然の帰結として、この規定する法人税申告書提出の期限までにその記載の法人税を政府(税務署長)に納付しなければならない旨を規定している。被告法人の本件における法人税の申告は、法人税法第十八条第一項本文の規定に基くものであるから、これが申告にかかる法人税は、同法第二十六条第一項の規定に従い右第十八条第一項に規定する申告書の提出期限内に政府(税務署長)に納付すべきはいうまでもないところ、法人税法は、第四十八条を設け「詐偽その他不正の行為により、第十八条第一項の規定により申告をなすべき法人税を免れた場合においては、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これを三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」旨を規定しているが、右にいわゆる「法人税を免かれ」た場合の同条所定の犯罪は、苟くも、同法第十八条第一項の規定に従つて政府(税務署長)に提出した法人税の申告書の税額の記載に法人税を免かれるための詐欺その他不正の手段に基く正当でないものがあるかぎり、その正当でない申告による税額と正当に申告せらるべき税額との差額につき法人税を免かれたものとして、前示第二十六条第一項所定の納付期限の経過と同時に成立すべきは、法人税法が採用した申告納税制度の前示目的に照らし、自づから明白であり、たとえ、その後において右不正の摘発等によつて為された修正申告の事実やこれが申告を認めた政府の更正決定に基く正当な税額に相当する法人税納付の事実があつたとするも、毫も右犯罪の成立に消長あるべきかぎりではない。果して然らば、原審が原判示事実につき、(原判示事実は、原判決挙示の証拠で優に認められるし、記録ないしは当審事実取調の結果によるも原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認はない)被告人会社及びその代表者である被告人丹羽芳雄を原判示各罰条の罪に問うたことは正当であり、法人税法の独自の解決を前提とする所論無罪の主張は採用するに由がない。論旨は理由がない。
(三宅 河原 下関)